「過失の推定」とは 

 原則では賠償請求の請求人が相手の過失を証明する責任
 民法上、権利の侵害者に対して損害賠償請求の訴訟を行う場合、権利者の方で、相手方である侵害者の「故意・過失」を証明しなければなりません。行為者の「故意・過失」が損害賠償請求の要件の一つとなっているからです。

 しかし証明は困難 → 請求不成立 → 権利者、泣く
 しかし、特許権や意匠権の侵害において、その性質上、侵害者の故意・過失を証明することは非常に難しく、証明できないことが多く、その場合は請求は不成立に終わってしまいます。

 そこで、侵害者に故意・過失があったものと推定
 そこで、特許法や意匠法においては、これらの権利の侵害については、権利者が侵害者の故意・過失を証明しなくとも、いったん、侵害者に故意・過失があったものと「推定」して、侵害者の方で、自分に故意・過失がなかったことを証明して「推定」を覆さない限り、自動的に故意・過失があったものと認定されてしまう、という規定を設けています。

 「推定」の背景には特許庁の合格「お墨付き」がある
 これを「立証責任の転換」といいます。この背景には、特許権や意匠権は特許庁の実体審査を受けて、合格の「お墨付き」をもらって、そのことが公報によって公示されているという事実があります。

 しかし、実用新案権は無審査で登録 = 「お墨付き」がない
 しかし、実用新案権は、実体審査を受けることなく登録されるため、権利が有効であるという保証がなく、無条件に「過失の推定」を認めると、侵害者にとって不公平な結果となってしまいます。

 そこで、実用新案権の損害賠償請求では「過失の推定」なし
 そこで、実用新案権侵害に関する損害賠償請求においては、特許法や意匠法に定められている「過失の推定」が適用されず、民法の原則通り、権利者の方で、侵害者の故意・過失を証明しなければならないことになっています。

by 橋本商標特許事務所