実用新案と特許との違い 実用新案登録に基づく特許出願の制度 |
実用新案権と特許権との違いを、以下の観点からみていきます。
特許は「方法」や、物質そのものについての発明も認められるが実用新案は?
審査のやり方や、審査に要する期間の違いは?
権利の存続期間(有効期間)の違いは?
侵害された場合、特許権と同じように差止請求などの権利行使ができるのか?
さらにここでは、特許制度との関係で、ぜひ知っておいた方がいいと思われる 「実用新案登録に基づく特許出願の制度」について簡単にご説明したうえで、 結論として、どのような場合に実用新案登録出願が考えられるのか申し上げたいと思います。
(1)実用新案と特許との違い
保護対象 | <特許> 発明(方法、プログラム、物質そのものも含まれる) 方法、プログラム、物質も出願できる |
<実用新案> 考案(物の形状・構造・組み合わせのみ) 方法やプログラムについての出願は認められない |
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存続期間 | <特許> 出願日から20年 |
<実用新案> 出願日から10年 |
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審査制度 | <特許> 新規性、進歩性などの実体審査が行われ、登録までに数年かかる場合もある |
<実用新案> 方式的審査と基礎的要件審査のみクリアすれば2〜3カ月で登録される |
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登録料の納付時期 | <特許> 出願時に出願料を、特許査定の通知後30日以内に登録料(3年分)を納付 |
<実用新案> 出願時に出願料と登録料(3年分)を同時に納付 |
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権利行使(差止請求、損害賠償請求など)の条件 | <特許> @権利行使について実用新案のような制限がない A侵害者の過失の推定が認められる |
<実用新案> @実用新案技術評価書の提示を伴う警告を行うことが権利行使の条件 A権利行使後に実用新案登録が無効になった場合に原則として相手方に損害賠償請求権が認められる B侵害者の過失の推定が認められない |
(2)実用新案登録に基づく特許出願の制度
実用新案制度の特徴として実用新案登録出願の日から3年以内に、
出願時の明細書に記載されている考案や発明について、「実用新案登録に基づく特許出願」をすることができます
。同特許出願については前の実用新案登録出願のときにされたものとみなされるため、その間にされたほかの
出願を排除して先願権を得ることができます。
ただし、この場合の特許出願についても、通常の特許出願と同じように実体審査があり、進歩性などの特許要件の
基準が甘くなるわけではありません。
しかし、後に実効力のある特許権に鞍替えできる可能性を担保するこの制度は、後述するように、 目的によっては、使い勝手がある制度であると思われます。
(3)どういう場合に実用新案登録出願をするべきか
以上のことから、できれば侵害者に対して権利行使が思うように
できない実用新案権を取るよりは、実体審査を経てお上のお墨付きをもらった特許権を取得したいものです。
しかし、いつでも、すぐに特許権がとれるわけではありません。とくに以下の場合には、とりあえず実用新案権を取得しておくこと をお勧めします。
身近なものについての小発明を権利化したいが、進歩性の観点から特許審査は通りそうもない。
製品に流行性があるため、20年間もの長期間にわたって登録料を払う必要はない。
競争相手が既に同じような製品を製造・販売しているので、早く権利を取得して差止請求や損害賠償請求を行いたい。
まだ、発明が完成していない、または特許要件を満たしているかわからないが、他の人(会社)も同じような製品開発 を行っている。
上ののような場合は、とりあえず実用新案権をとっておいて、後に「実用新案登録に基づく特許出願」の制度を利用して特許出願に
鞍替えすることも可能です。とくに先願主義の下では、他の人より一刻も早く先願権を取得しておくことが重要なのです。
ただし、無審査登録主義を採用する実用新案制度においては、権利が登録されていることは、権利が有効であること とは違うことを忘れてはなりません。上記(3)のように権利行使を行う際には、逆に相手方から無効審判を請求され、 後に損害賠償を請求されないように、特許庁から「実用新案技術評価書」を取っておくほか、 自ら権利の有効性について弁理士等を通して十分に調査を行っておく必要があります。
by 橋本商標特許事務所