意匠法では、「意匠とは物品の形状、
模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう」
(第2条第1項)とあります。短く言うと、意匠は「物品の美的形態」であるということです。
このことを、さらにわかりやすく分けていうと、以下のようになります。
 物品に関わるデザインであること
一般にデザインというと、紙の上に表した模様や文字の集まりや、店舗内のレイアウトを思い浮かべることが多い
のですが、意匠制度によって保護される意匠は、物品の形状と模様・色彩が結合したものであって、具体的な物品から
離れたデザインそのものは保護対象にはなりません。
意匠登録出願の願書には「意匠に係る物品」を記載する欄があり、「自家用車」とか「コーヒーカップ」とか、
デザインに係る物品の具体的な名前を書かなければなりません。
また、その「物品」も、ちゃんとした形があって、独立して取引されるものでなければなりません。
つまり、ネオンサインや花火のような電気や光であったり、定型性のない粉や液体は、意匠に係る
「物品」として認められません。
また、不動産は市場で流通するものではないので物品として認められません。
 物品自体の形状・模様・色彩であること
物品自体の形状でないため意匠とは認められないものには、商品の配列や、ハンカチをバラの花の形に
折ったものなどがあげられます。これらのデザインは、商品またはハンカチ自体の形状ではないためです。
また、商品や包装に書かれた成分表示や使用説明などの情報伝達のためだけの文字は、装飾性がなく
模様とは言えないので、意匠の一部とは認められません。
 視覚を通じて美感を起こさせるもの
音、手触り、味覚といったものは見えるものではないため、認められないのはもちろんですが、
通常の状態では確認できないような腕時計の内部の形状や、ふつうでは形を確認できないような
小さい塩の結晶などの形態も、「視覚を通じて」とは言えないので保護されません。
次に「美感を起こさせる」というと、きれいでなくてはいけないような印象を持ちますが、
意匠の「美感」には「装飾美」だけでなく「機能美」も含まれるため、ここでいう「美感」とは、
需要者にその物品を買いたくなるような刺激を与えるもの、といった程度に解釈できます。
したがって、ネジや工具の形状もほかの新規性などの要件を満たせば意匠として保護されます。
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