なぜ実用新案権?

 特許法の保護対象が「発明」 であるのに対して、実用新案法の保護対象は「考案」です。 「発明」「考案」の違いはなんでしょう。また、 どうして発明を 保護する特許制度とは別に、考案を保護する 実用新案制度があるのでしょう。

 (1)小発明の保護と特許制度の補完

 日用品などの小発明には実用新案権

 特許法第2条では、「発明とは、自然法則を利用した 技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」とあり、実用新案法2条では 「考案とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。」とあります。 つまり、発明と考案の違いは、「高度のもの」 という一言があるかないかです。

この違いは特許要件の一つである 「進歩性」の基準の違いを示しています。ふだん使用する日用品に ちょっとした工夫を凝らして便利にしたような小発明は、進歩性の程度がそう高くないため、 特許権の取得が難しい場合があります。しかし、これらの工夫の成果を権利として認める制度がなければ 世の中の創作意欲を高めることができないので、私たちの周りに存在するものの実用価値はなかなか高ま りません。

そこで、実用新案制度を設け、「考案」の進歩性のバーの高さを特許権よりも 低くすることによって、私たちの生活を豊かにするような物品の工夫を積極的に保護し、 これらの小発明を奨励しているのです。

  (2)ライフサイクルが短い商品の保護

 流行商品には実用新案権

世の中には業界の技術の進歩が速かったり、 流行に左右されたりして、ライフサイクルが短い商品が数多くあります。 そのような商品を開発した人は、できるだけ早く権利を取得したい一方、 それほど長い期間権利を保護してもらう必要はありません。

このような人たちのために、実用新案制度では、 出願後、方式的審査基礎的要件審査だけで、 特許のような実体審査を行わず、5か月前後で登録になります。

また、特許権の存続期間が出願の日から20年である のに対して、実用新案権は出願の日から10年です。

  (3)中小企業や個人事業主の方々が権利取得しやすいように

 経費・人材面で特許取得が難しい場合には

一般的に中小企業や個人事業主の方々は 資金力と人材の点から、大企業がするような大発明を完成させることが難しいのが現実です。 しかし、実用新案制度によって小発明を保護すれば、日本の産業構造の大きな底辺の部分を占める これらの方々の保護につながり、大企業に対抗しうる技術力を 持っていただくことも可能となります。

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